ノーウェア島のお化けたち

ハハ、リュカのジャコランタン、ちっともこわくないやい!」
「なんだい、クラウス兄ちゃんのだって!」

タツマイリのかわいいふたごの兄弟、リュカとクラウスはただいまハローウィンのお祭りの準備中。かぼちゃランプの見せあいっこです。やさしいヒナワママが中身をくりぬいてくれた2つのかぼちゃ。それにそれぞれ目と鼻と口の形をかいて。それをナイスガイのフリントパパが「む」と言いながらナイフで切りぬいてくれて。

できあがったクラウスのランタンは悪魔みたいにニタニタ笑い。
かたやリュカのランタンときたら天使さまのようにニコニコ笑顔。

ちょっと、いやちょっとどころかとってもお化けのパーティにはもったいないぐらいにかわいいランタンです。

「これはねーっ、お化けのあかちゃんなんだい!」
だってあんなおっかないドラゴだってあかちゃんはかわいい顔してるじゃん! クラウスはケラケラ笑い出しました。
「よーし、じゃ、兄ちゃんのランタンは父ちゃんだぜ」
うん、目の下に浮かんだ悔し涙をぬぐってリュカはいじらしくうなずきます。そんな弟がかわいくてかわいくて。クラウスはお兄ちゃんらしく胸を張って、さあお化けにフンソウしなくちゃ! とリュカの頭を小さく小突きました。
「どしよかな、どんなお化けがいいかな?」
この前ママが話してくれたドラキュラはとっても怖い怪物。だけどどんな格好をしているのかママは教えてくれませんでした。村長さんは「チミらは狼男を知ってるかね? ふがふが…」と言いながら結局「狼男」のことを教えてくれなかったので「狼男」の格好はできません。

フエルが宇宙人の話をしてくれたけど宇宙人は足が13本ぐらいあるんだって。でもリュカとクラウスは2人の両手両足足してやっと8本。宇宙人も無理!

「ねえ、まえにウエスじぃが言ってた、イッタンモメンはどう?」
「イッタンモメン?」
ほら、とリュカはいっしょうけんめい思い出します。
「ニホンって国のユーレイだよ。一枚のひょろながーい布でできてるお化け!」
リュカがウエスじぃの真似をして「ひょろながーい」と両腕を上下に広げてポーズをとったのでクラウスは顔を真っ赤にして笑い転げました。ひとしきり大笑いしてからクラウスはベッドシーツをはぎ取ると、弟の前で不器用にひらひらさせて見せます。
「リュカ、反対もてよ!」
また泣きそうになっていたリュカはとたんにニコニコ笑顔になって、うん! とお兄ちゃんに言われたとおりにシーツの端を握ります。そして二人でせーのでシーツを揺らすとひらひらとシーツが波打ちました。
「これがイッタンモメン?」
「うん!」
「よーし! 行くぞー!!」
ふたごたちは意気揚々、ランタンを手に取ると大はしゃぎでタツマイリ村に駆け出しました。

「お菓子ちょうだい、くれないといたずらするぞー!」
リュカとクラウスは声をそろえてシーツを揺らしながら村中を駆け回ります。…でも。
「おほん、おほん! チミらは…まったくチミらは!」
「どうしたんだいリュカにクラウス? お化けに扮装しておいでよ?」
「はは、それがお化けなの? シーツじゃん!」

村長にトマスさんにフエルにまでリュカたちをバカにします、リュカもクラウスも今にも泣きだしそう。走り回る力もなくなったいたいけなおちびたちがシーツをかぶってぐすりだしたその時でした。

「おおぉ、前に親父が話してたイッタンモメンがいるよ…! こわいよぉ、こわいよぉ!」
突然の震え声にそろそろとシーツから顔をだすとそこにはガクガクブルブルのダスターの姿、とダスターはおっかなびっくりリュカたちの顔を覗き込んで大げさに胸をなでおろしました。
「なんだぁ、クラウスにリュカ坊やだったのか! 驚かせるなよ!」
ダスターは持っていた駄菓子の袋をリュカとクラウスのランタンの中に投げ入れました。その様子に村のみんながそろりそろりと3人の周りに集まってきます。
「なんだい、イッタンモメンて」
「どんなお化けだい?」
ダスターがふたごに目配せし、みんなに教えてあげなよと小さい肩をぽんぽんとたたきます。2人はうんと目を見合わせ手振りもまじえて唱えます。
「ニホンって国の、ひょろながーい、布のユーレイなんだよ!」
とたんにどっと笑いが起こります。そして村中のみんながシーツのなかにたっぷりお菓子を投げ入れてくれました。
「うわぁ、ありがとう!」


「ママー、パパー、ただいまーっ!」
山ほどのお菓子をシーツにひきずりながらリュカとクラウスはお家に飛び込みます。あらあら! ヒナワママがクスクス笑います。いったいどんなお化けのおでましかな? フリントパパもやさしく微笑みながら子供たちの頭をよしよしします。ふたごは声をそろえて言います。

「イッタンモメン!」

それからしばらく、タツマイリ村は「ひょろながーい」布のユーレイのお話ですっかりもちきりになりましたとさ。

MOTHER3はほのぼのハローウィン(童話風)vゲームの事件が起こる前のふたごちゃんのお話です。そしてここにきてクラウス処女作でもあります…。かわいいふたごちゃんの扮装はきっと、とても簡単なもの。でもそこを、童心の想像力で解してあげるのがダスターのオトナ心v「一反木綿」のポーズはオソ松くんのイヤミの「しぇー」の…あんな感じを想定してます←
ともあれノーウェア島のみなさんはリュカたちの必死な思いもちゃんと理解して大切にしてあげられるひとたちだといいな、と思います。


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