あつあつのご飯に白焼きにしてたれをからめたにょろにょろをのせて山椒をまぶしたあの料理ですよ

おや、こんにちは。この馬村老人多田爺こと徹さんにどんなご用件かな? なに、今日はボクに何かを語って欲しいとねェ。たいして話すこともないんだがね、それじゃあ半時ばかり、ボクの夏の必須アイテムの話をしてあげよう。夏といえばきっと、暑さ対策が第一に挙げられるだろうねェ、というわけで暑さ対策の必須アイテムを6個ぐらい紹介しようかね。

いいかね、ボクがこれからお話しようと思うアイテムは、例えばUSBポートの持ち運び扇風機とか、プロペラがついた書きながら涼むことのできるボールペンとか、保冷財パックを中に詰めたスカーフとかそう言った代物じゃぁないんだ、なにせボクの家はあんまりにも質素で貧乏だし、そのうえ僕は素朴な愚か者だから、そういったものを手に入れる機会にも、そのためのお金にも、恵まれていないのだよ。

さてと、それじゃあ、ちょっぴりボクの庭を案内するとしよう。ボクの庭は小さな畑になっていてね、あすこでカリカリに枯れているのはとうもろこしさ。今年は早いころに収穫があって、とっくに枯れてしまったんだよ、残念だったねェ、ははは! そしてこれが、夏には欠かせないボクの必須アイテムその1―のミントたちなんだな。ここにはオレンジミントとパイナップルミント、それにアップルミントが植えてあるんだけれど、どうやらミントは根っこ同士で交配するみたいでね、パイン・アップル・レンジ・ミントが下からぐんぐん育ってきているのだよ。 で、この、すっかり毛虫にかじられて丸坊主になっているのがスペアミント。その横で茂っているのがペパーミント。ためしにちょっと葉っぱをもんで匂いを確かめてごらん、そら、歯磨き粉のような、スーッと鼻を突き抜ける清涼感ある甘い香りがしたろう?

ミントにはメントールと呼ばれる昇華性の結晶が含まれていてね、一般に薄荷油と呼ばれるものがそれなんだね、この匂いを嗅ぐだけで体感温度が4℃も下がると言う実験結果もでているそうだよ。さらにミントの葉っぱを水で煮出すだけで、充分クールダウン効果の期待できるミント水を作ることができるんだな。ミントはもともとは雑草だから元気いっぱいぐんぐん伸びて育って、畑一面ミントになったりもするもんだよ。

で、もったいないぐらいたくさんミントがとれたら、なべにほかして、ひたひたのお水で約10分―水に色がつく程度に煮出せばミント水の完成ってもんさ、飲むときには炭酸水やお水で割るといいね。スプレーにして部屋に散布すればそれだけで爽快感を得られるし、無水エタノールを加えれば虫除けスプレーにもなるんだよ。煮出したあとの茶葉は、浅漬けの素をかけて冷蔵庫に入れておけば次の日には美味しい漬物に大変身、それでも余ったら庭にばら撒いておけば腐って肥料にもなる、さらに今の時期はこおろぎやスズムシといった秋の虫の幼虫たちが、出し殻を食べに集まってきたりもするもんだよ、夏のうちに秋の風情を青田買いってワケさ、いいアイディアだろ?!

すがすがしい気分になるのもいいけど、夏バテにはビタミンやカリウムをとるといいね。それには、これはボクのかわいい愛馬たちもお気に入りの逸品なんだけど、ハイビスカスやローズヒップのティがおすすめ! ボクの夏の必須アイテムその2はこのハイビスカスとローズヒップのブレンドティなんだな。程よい酸味が疲れた体をリラックスさせて、根付けてくれるんですよ。夏の暑い日に外出するときは、マイペット―いまは魔法瓶といわないんだねェ―に冷たいハイビスカスティを入れて持参するね、まあ対外は、一時間もしないうちにからっぽになってしまうけれどネ!

ちまたではゴーヤのカーテンなるものがはやっているそうだけど、ボクの家にはあさがおのカーテンが生えていますよ。だってほら、ふつう夏の風物詩と言ったらあさがおじゃないですか、ボクは素朴な愚か者だから、通の概念ってモノに程遠くてネ…ゴーヤなんて不思議な植物に憧れはするものだけど、いやいややっぱり、庶民的なあさがおで満足することに決めましたよ。で、このあさがおのカーテンがボクの夏の必須アイテムその3だネ、ゴーヤのように果実―味を楽しむところまでは期待できないけれど、青や赤の色鮮やかなお花を楽しむことができるだろ、そのうえゴーヤと一緒で、支柱を何本かたてておけば立派なカーテンになって日よけの効果バツグンなんだな。

それにこのあさがおは大変優秀でね、わざわざ種を春先にまかなくても、今咲いている花の種が自然にこぼれて越冬して、適切な時期になると勝手に生えてきてくれてね、発芽までまったく手間要らずってワケさ。

おや、むこうでボクの愛馬たちが呼んでいる、ははぁ、そろそろおやつにしようってわけだね。それならばちょうど良かった、馬たちのところに行く間に、ボクの夏の必須アイテムその4を紹介しよう。…夏になるととかくカキ氷とか冷たいものを食べて体を冷やしたくなるけれど、ボクが気に入っているのはところてんなんですよ。年寄りの冷や水ってやつかねェ、暑いからといってあんまりに冷たいものをかきこむとかえって底冷えしてしまってネ!

その点、ところてんはどんなに冷やしてもカキ氷にはかないっこないけど、見た目は透き通っていて涼しげだし、酢醤油とからめて食べると、じわりじわりと体が涼しくなっていく気がするんですよ。で、ボクとしては、おやつとして遜色はまったくないと思うよ、ところてん! それに、ところてんは海藻から作られているから、低カロリーで食物繊維が豊富なんですよ。この食物繊維は消化されずに腸まで届くから腹持ちもいいし、腸を元気付けてコレステロール吸収を助け、整腸効果も期待できるとされているんだな。 ようはね、ところてんをおやつとして食べると、おやつが清涼感に満腹感と、ダイエット効果にデストック効果までもたらしてくれるってことさ! ほら、ボクは自他共に認めるおでぶさんだからね、ハハっ。

…なんだい、馬たちが用意していたのはところてんじゃなくってスイカだったよ。ところてんと掛けて、スイカと解きます、その心は…え、なんだって、そんなのどうでもいいから早く割ってくれって? 仕方ないねェ、おや、それにしてもおいしそうなスイカだね、じゃさっそく割ってみようかねェ。さァて、ほら、みずみずしい赤い果肉がぎゅっとつまって、見るからにおいしそうだよ! やっぱりパスモよりスイカだねェ―っておっと、一体このボクになにを言わせるつもりだい?

スイカを食べるときに重宝するのが手ぬぐいさ。いや、スイカを食べるときに限らず、夏の必須アイテムといったらこれ抜きでは語れないぐらいに大切なアイテムだね、この手ぬぐいは。…

いやはや、一番大切なものをすっかり忘れていたよ、いままでずっと頭にかぶっていたのにねェ! 虹の中にいる人は自分が虹の中にいることに気がつかないっていうけど、まさにそれのことだね。ともあれ、こうして広げて頭にかぶせて、さらに上から麦藁帽子をかぶると、直射日光はもちろん、横からの紫外線からも顔を守ってくれるし、汗をかいたときにすぐにぬぐえるからとっても便利なんですよ、ボクにとっちゃァ畑仕事や土いじりをするときの典型的な服装なんだな。

さて、この手ぬぐい、夏にどんな風に活躍するかと言えばね! まずはスイカを食べるときに、文字通り手や口をぬぐうので大活躍さ、もちろんスイカの色が移るから、なるべく暗い色のて手ぬぐいを用意することをおすすめするよ。せっかくのスイカだもの、口や手が汚れるのを心配してちびちびかじるよりは、豪快にがぶっと食らいついたほうが味も八割り増しって具合さね。

そして次は冷却効果。クールスカーフと同じで、この手ぬぐいを水で濡らして固く絞って首に巻くだけで、ずうっと冷たく感じられるヨ、首は動脈の通り道だからね、ここを冷やすことで体全体を冷やすことができるってわけだね。 おでこが熱く感じたときは、濡れ手ぬぐいを縦に折って、おでこに巻くといい、髪がうっとうしくて作業に集中できないときなんかは手ぬぐいをおでこに巻いてうなじの下でしばればヘアバンドにもなるんだよ。ボクはしょっちゅう手ぬぐいをヘアバンド代わりに、髪を捲し上げているんだな。

だけどなんったってこの手ぬぐいのすばらしいところは…よいこらせっと、取り出だしたるこの扇子…のよき相棒として、ボクらにおいしい幻想をプレゼントしてくれるってことだろう!? じゃ、馬たちにならってボクも、ちょっくらご飯にするとしよう。さぁて、手ぬぐいのなかにつつんであるのは…おっとこれはおいしそうだ、なんて香ばしい湯気なんだろうね! こうして味付けに薬味をつけて…ふうっはふはふはふっーと、おおこれは夏ならではだね!


 え? うどんかって? この暑いのに冗談はよしておくれ、これはうどんじゃなくって、「うなどん」ですよ!

自分でもこのタイトルはないだろ!と思いつつ、気に入っているので直さずアップ♪ためしに家族に「あつあつのご飯に白焼きにしてたれをからめたにょろにょろをのせて山椒をまぶしたあの料理食べたい!」と言ってみたところ、一人を除いてまるで通じませんでした(苦笑)
いつぞやのブログお題「夏の必須アイテム」創作。落ちはほのかに落語っぽくしてみたつもり。まったくお粗末さまでした!


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